フランスにはない夏ジビエ

フランスにはない夏ジビエ

「生後3ヶ月 雌の子鹿のローストです」。 ミュゼにおいては毎日耳にするフレーズだが、本場フランスにはない。元々狩猟民族であるフランスでは厳しく猟期が定められており、ジビエは冬のご馳走である。 肉質は血を体に回した野性味のある肉に、たっぷりの洋酒やスパイスを使い複雑に仕立てた皿に、濃い赤ワインを合わすのが本場のスタイル。 そんな中、日本においては近年爆発的に増えた鹿や猪を1年中駆除し、厳しいルールを設け、山の恵として全国的に工夫がされている。...
森の妖精 津の天然茸 ポルチーニ編

森の妖精 津の天然茸 ポルチーニ編

7月に入って雨の日から2日後の朝、高い湿度の中車を走らせ森へと向かう。途中の野池でテールウォークする魚を見るが本日のお目当ては君ではない。 様々な自然界の刺客を気にしながら奥へと進む。心のアンテナを張り巡らし、欲望マシーンと化した私がやっけになって探すのは、ヤマドリタケモドキ。俗に言うポルチーニ茸、フランスではセップと言う。 実は三重県は茸にとってよい気候で、マイタケや天然では幻と言われるハナビラタケも近くのポイントであがる。ちなみに私は見たことがないトリュフまであがるという。...
森の妖精 津の天然茸 アミガサタケ編

森の妖精 津の天然茸 アミガサタケ編

初夏、竹と竹が擦れあう音を聴きながら藪へと入る。少々の緊張感なのか段々音が大きく聞こえてくる…。静かな生き物達の鼓動を気にしながら奥へ奥へと向かうと間もなく、帽子を被った童話の小人のような姿がお出迎え。小人の正体とはアミカサタケと言う茸でフランスではモリーユと呼び高級茸として知られる。私が摘む津のポイントは、日があまり当たらない場所で顔を出す為、普通は灰色をした茸だが、透き通るような美白でサイズも大きい。 新作の料理で、このモリーユの中に実エンドウのピュレを詰め蒸し煮にし、鹿のローストに焼いた無花果と一緒に添えた。―グート ド...
忘れていた美味しさと思い

忘れていた美味しさと思い

休み明けの火曜日、若いスタッフが行う儀式がある。今回は2月に入社したパティシエール(女性パティシエ)がその当番。大きなまな板、私の使い込んだ骨すきと言われる包丁を握りしめ、相手に挑む。 その相手とは赤い羽のひねどり。芸濃町の鳥鹿養鶏園さんが生産する、ブロイラーの10倍ほどストレスなく長生きしていた鶏であり、私たちに健康な卵を産んでくれていました。...
皐月の頃

皐月の頃

桜の花びらがひらひらとレストランの裏口を飾る。朝の出勤時間で一番気持ちが良いこの時期。私のもうひとつの楽しみは限られたこの4週間、サツキマスが津の前浜で捕れることです。 サツキマスはアマゴの降海型で、川に残るアマゴに比べ随分と大きくなります。故郷である木曽三川へ産卵で帰る途中、津の前浜の魚道を4週間ほど通ります。そこは定置網をし変えるのは、この地の漁師だけが知る特権です。...
小さな巨人の干し野菜

小さな巨人の干し野菜

あるオーガニック系のマーケット。参加者がその姿を見つけると、目線に合わせて上体を沈める。つやっつやの肌と満面の笑み、そして山の声を代弁して喋る。 坂本幸さん、美杉在住の働き者のおばあちゃんこそが、最も原始的な保存食のスペシャリストであり、私の心の師である。 力漲る元気な野菜や野山の実りと対話し、極上の素朴を生み出す。ステーキ大根と言われる凍み大根、菊の花茶、干しスギタケ、トマト味噌など、私の料理に欠かすことの出来ない幸さん商品は体が喜んでいるような余韻の広がりである。...