空っぽのワインセラー

空っぽのワインセラー

今から約20年前、修行中の少ない収入で頑張って大きいワインセラーを買った。実家の男臭くて狭い部屋に空っぽのセラーが聳え立った。人生で初めて本気で勉強したソムリエ試験の頃からの相棒だ。 あれから県内の酒屋やワインショップはもちろんの事、旅先でも必ず酒屋巡りをしワインを買い集めた。初めてのヨーロッパ、スキポール空港の中のショップで買った古いクーレドセラン。パリのニコラで奮発したシャトーディケム。念願のサンテミリオンで立ち寄ったアンジェルスとクロフルテ。一番下の段には、ウチヤマ酒店の長田さんから預かっているグランヴァン。...
二見浦 秘境のスイーツ

二見浦 秘境のスイーツ

伊勢市駅前にあった噴水と二羽の白鳥の像。いつものように3兄弟で占拠した後、一番ホームから出る国鉄に乗り込む。二見浦のタミおばちゃん(民子さん)の家に泊まりに行くのは、出口家夏の終わりの恒例行事。 翌朝、おばちゃんの家から3km程の長い道のりを歩き二見シーパラダイス(現伊勢シーパラダイス)を目指す。...
0.5ha美術館横のシャトーローリエ

0.5ha美術館横のシャトーローリエ

まだトリコロールの色も意識していなかった二十歳の頃、師匠の薦めで初めてワインを買った。 細長いスリムな緑色のボトルに黄色いラベル、仏アルザスを代表するヒューゲル社リースリングのハーフボトル。不慣れな手つきでソムリエナイフを使ったが、キャップシールで指を切り、さらに力んでコルクも割った。デビュー戦のほろ苦い思い出。輝きのある緑がかったレモンイエローの液体から立ち上る、生の月桂樹の花と葉っぱのような香り。  ミュゼのテラスに根をはる2本のローリエ(月桂樹)の葉を料理用に摘む際、いつもあの頃の事を思い出す。...
幻のブラックパール

幻のブラックパール

ふとした時に見つけた春の足音。 我々日本人は他の季節にない喜びを春に感じる。 目覚める大地・小躍りする春告鳥(うぐいす)。 野の草の息吹をありがたく頂戴し、そのエネルギーを食す。 2019年平成最後の年明け、自然との対話を大切にする私に、幼馴染からある方を紹介された。 伊勢古仁屋(コビトヤ)工場長 吉田...
積み木とあられ

積み木とあられ

8月で5歳になった次男坊。少々危なっかしい所やひょうきんな所は、自分の幼少期と重なって見える。「脱走して家に帰らないように!」と、あえて遠くの保育園を選んだと母やんから聞かされた。 伊勢市大世古保育所虎組の集合写真の中に、今と変わらない顔の自分と、もう一人今と全く変わらないクラスメイトの清水。三代続く南勢糧穀の現社長である彼とは中学まで同じ学校に通い、優秀だった彼とそうでない自分はそれから全く疎遠であった。20年という熟成を経てフェイスブックなどで繋がり集まった同級生の中で彼とも再会した。...
魅惑の外道達② 魂のヒゲ

魅惑の外道達② 魂のヒゲ

ヒメジ、ベラ、ヘダイ、グレ、赤エイ…。外道という不名誉な呼ばれ方をする魚たち。光と影、どんな世界にでもある勝手な勝負付け。 赤い魚には高級魚が多い。明石の鯛や甘鯛、キンキにノドグロなど花形が名を連ねる。 「ヒメジ」をご存知だろうか?...