執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
日本中の飲食店が右往左往するしかなかったこの一年。改めて色々な事を考えさせられた。 ただ、このハード設定の人生ゲーム、元々が丸腰の僕には不思議と怖くなかった。 店を支えるソムリエールのあさみも「シェフはまた何かやるんでしょ?皆言ってますよ(笑)」と不安なく笑っていてくれた。そんなプラスのマインドのおかげで斜め上に目線を上げ、いつものように走り続けた。そしてオーナーとしてのいくつかの目標もクリアした。 2021年春、そんなミュゼにもピンチが到来。スーシェフのだいきとあさみが次のステージへと大きく羽ばたいた。...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
七つの頃、近所のお兄ちゃんの家でそれを初めて知った。大きな二つ折りの厚紙を広げると、目につく大きなルーレット。自分の好きな色の車を選び、そこに小さな青いピンを刺す。これがこのゲームの僕。 お金、保険、株に赤字手形など、日本の義務教育ではあまり教えてもらえない社会のリアルなどが散りばめられている。ルーレットという時間を自らの手で回し、止まったマスの出来事を受け入れながら自分の物語が進んでいく。そんな今思っても深い内容のボードゲームに子供の頃の僕は単純に真剣になった。...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
カエルが泣き出した5月の夕暮れ。いつもなら厨房を飛び回る時間に、僕は川のせせらぎを聞いていた。 人類の危機的状況が生んだポッカリと空いた時間。 暇なランチ営業で残った小アユを針に刺し、糸を垂らして天然ウナギやスッポンに変わらないかという悪童の悪巧みだ。 アタリがあればわかるように竿先には鈴を付け、僕はもう一つの獲物であるいたどりを摘む。 いたどりはこの時期の楽しみで、リンゴと甘く煮てピュレにしたりシャーベットやジュレ、ピクルスやドレッシングなどにも使い、僕の中にある5月の食材カレンダーには毎年必ず登場する。...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
令和2年に入り、ミュゼのシェフになって15年の節目と、次男坊の小学校入学を控え特別な想いがあった。 そんな中、我々日本のフレンチ業界に大きなニュースが飛び込んだ。遂に念願だった本国フランスでの日本人シェフによる三ツ星レストランが誕生した。世界の最高峰の一角に名を連ねた「レストラン KEI」小林シェフ。「私は富士山ではなくエベレストを目指したかった。」と語った喜びのスピーチは、歴史が動いた瞬間だった。...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
今から約20年前、修行中の少ない収入で頑張って大きいワインセラーを買った。実家の男臭くて狭い部屋に空っぽのセラーが聳え立った。人生で初めて本気で勉強したソムリエ試験の頃からの相棒だ。 あれから県内の酒屋やワインショップはもちろんの事、旅先でも必ず酒屋巡りをしワインを買い集めた。初めてのヨーロッパ、スキポール空港の中のショップで買った古いクーレドセラン。パリのニコラで奮発したシャトーディケム。念願のサンテミリオンで立ち寄ったアンジェルスとクロフルテ。一番下の段には、ウチヤマ酒店の長田さんから預かっているグランヴァン。...