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85年目のクレパス

執筆者 | 6月 21, 2023 | コラム | コメント0件

平成29年 立冬、ハシボソガラスの乾いた鳴き声が広大な橙色の敷地に響く。昭和8年から続くこの景色は、津市高野尾にある前川さんがご夫婦で営む果樹園。創業からこの丘を見守る樹齢86年の次郎柿は、祖父から繋げてきた誇り。当初は柿一色だった果実も、今では種類豊富な柑橘類やザクロに巨大なスイーツキウイ、私が樹ごと買わせていただく大きなサルナシなど、まるで色鮮クレパスのようにこだわりの品が揃う。

先代がモノクロ写真の中から見つめる園内は、今もあの頃と変わらない笑顔が溢れる。前川さんのクレパスをお借りして、私もお皿の上に鮮やかな指揮を描いていきたい。