潮干狩りとマリンスポーツで賑わう津の海。カラフルなヨットの帆と様々な国の人達が各々に楽しむ姿に、私の中のモノクロ写真を思い出す。
ヨーロッパ修行中、最後に訪れた地中海に浮かぶ島イビザ。ヒッピーの最終駅と言われるこの楽園のビーチで、トップレスの女性に目もくれず、黙々と浜の草を摘む現地の少年達。何かと尋ねると「貝と蒸し煮にする。」と教えてくれた。
「日本でも色々調べて自分の料理に取り入れよう。」と、新たな意識をいただきヨーロッパの修行を終えた。
安濃川の桜がチリ海に流れ出る頃、浜大根の実を摘みに行くのはミュゼのシェフになった13年前からの楽しみ。他に浜葉・浜ぼうふう・おかひじきなど魚介と共存する値の付かない浜の野草に、自然と思う感謝の気持ち。そして、イビザ島の少年たちへ。遠く離れた島国から心を込め、夏のスペシャリテに「ガスパチョ イビザ風」と名付けた。
※ガスパチョ(トマトをベースにしたスペイン風野菜の冷たいスープ)