桜の花びらがひらひらとレストランの裏口を飾る。朝の出勤時間で一番気持ちが良いこの時期。私のもうひとつの楽しみは限られたこの4週間、サツキマスが津の前浜で捕れることです。
サツキマスはアマゴの降海型で、川に残るアマゴに比べ随分と大きくなります。故郷である木曽三川へ産卵で帰る途中、津の前浜の魚道を4週間ほど通ります。そこは定置網をし変えるのは、この地の漁師だけが知る特権です。
神々しい銀色の魚体にかすかに残る赤い模様はアマゴの記憶。上品で雑味なく、ぬっちりとした身質に、価格を気にせずやっきになるベテラン料理人や食通も多い。春の雨上がりに初めて虹がかかる皐月の頃。タケノコ、実山椒（さんしょう）、皐月（さつき）賞。そして、サツキマス。私もやっきになる料理人の一人です。
