ヒメジ、ベラ、ヘダイ、グレ、赤エイ…。外道という不名誉な呼ばれ方をする魚たち。光と影、どんな世界にでもある勝手な勝負付け。
赤い魚には高級魚が多い。明石の鯛や甘鯛、キンキにノドグロなど花形が名を連ねる。
「ヒメジ」をご存知だろうか？
真っ赤で鯉のような形。下アゴにヒゲがあるためか、地方によっては「オジサン」と呼ばれ、外道のオジサンというかなり可哀想な扱いを受ける。伊勢海老などの底引き漁などで網に入るヒメジは、少し甲殻類のような香りがあり、皮目をカリカリに焼くと他の魚にはない香ばしさがある。実は日本のオジサン、フランスでは高級魚で「ルジェ バルべ」と呼ばれ、鯛や鈴木より上等とされる。高級店でよく使われ南仏料理には欠かせない魚なのだ。
そんなオジサンを、紀伊長島から朝捕れの活〆で昼過ぎにはミュゼに届けてくれる魚屋「海人」の二人。私の相手をしてくれる橋倉さんは同じ年齢。人生ウケ狙いな所もよく気が合う。私とは違うスタイルの髭を生やした彼とは、ヒメジと共に太いヒゲで繋がっている。
