ヒメジ、ベラ、ヘダイ、グレ、赤エイなど、外道という不名誉な呼ばれ方をする魚達。
光と影、どんな世界にでもある勝手な勝負付け。理由は色々とあるが、まとまった水揚げがなかったり料理人が使いにくく(扱えず)、買い手が少なくお金になりにくいので漁師の扱いも荒く、状態の良くない物が出回る。多くの調理師が年中安定した味を求め今日も養殖の鯛や冷凍のブリを仕入れる。(これが悪い訳ではない。)
先日、津の前浜にマゴチを釣りに行った際、外道である大きな赤エイを釣り上げた。石鯛やクエのように心を込めて活け〆にし血を抜いた。市場に並ぶ赤エイや、フランスでよく使うエイは捌いてから牛乳に漬けたりクールブイヨンで一度湯がきアンモニア臭を消す作業から入るが、自ら処理した赤エイの美しさに驚いた。下処理一切不要で、綺麗で上品な身は刺し身でも美味しく食べられる。そんな外道を見て何かが降りてきた。ヒレを身と軟骨に分け、軟骨は甘塩とスパイスを軽く振って干物に。
身は塩だけで味付け。粉を付けて香りよくポワレに。夏野菜、地の貝、こぶミカンの葉っぱとバジル。仕上げに最上のオリーブ油で蒸し煮にしてエイに添えた。
前浜と同じ風で干された軟骨を炭で炙り、新しいテロワの味(この地の味)が完成した。
最後に、東京やフランスの三ツ星レストランで、養殖の鯛や冷凍のブリが出る事はあり得ないが、エイは多くのグラン シェフがスペシャリティとして使う。