「はい、そこまで。鉛筆を置いてください。」人生で初めて本気で勉強し、回りの期待を背負い挑んだ真夏のソムリエ試験。結果は実力不足で不合格。負けを引きずり不平不満に塗れた23歳の自分。
数カ月後、脱線したワイン街道行きポンコツ列車の車輪を正してくれたのは、一番期待していただいた師匠である河瀬シェフでした。「残念やけど、逆にお前はポンと受かった人らより倍勉強出来る。後方から一気に捲くったれ!」魂に再びガーネット色の炎が灯りました。
翌年、蝉の大合唱を味方につけて挑んだ試験。鉛筆とテーブルが奏でる音色とテーブルが奏でる音色を静かに聞き、終了のコール前には目を閉じていました。結果はマル。弱虫な私にとっては人生で初めての勲章。それから4年の28歳の時、当時の日本最年少でシニアソムリエを取得。
そしてあれから13年、ミュゼが15周年を迎える今年、一番ワインのイメージがなかった、パティシエールでサービススタッフの中川朋佳がソムリエールにチャレンジします。昨年の四日市臨時出店でワインに目覚め、果てしないワイン街道を歩み始めました。彼女のデビューの日、我々同世代の同業者から天才と言われるK氏だけが見た未来は「この子は確実に伸びる。持って生まれたキャラと距離の取り方が絶妙」と語った。今年、合格すれば日本最年少ソムリエール。実力はまだまだで経験も浅い、日本一力のないソムリエの誕生を祈りつつ一言贈りたい。「最後方から捲くったれ!!」