ふとした時に見つけた春の足音。
我々日本人は他の季節にない喜びを春に感じる。
目覚める大地・小躍りする春告鳥(うぐいす)。
野の草の息吹をありがたく頂戴し、そのエネルギーを食す。
2019年平成最後の年明け、自然との対話を大切にする私に、幼馴染からある方を紹介された。
伊勢古仁屋(コビトヤ)工場長 吉田 仁さん。彼の仕込むわらび餅を食べてほしいという事で、深くは考えずいただいた。こだわりのきな粉や抹茶などに包まれたわらび餅。もちろんそれらも非常に特別で美味しいが、中のわらび餅自体に衝撃を受けた。見たことのない黒真珠のような色調と輝き。これまで食べてきたワラビ餅との違いや歴史を紐解いてみた。
平安の時代から受け継がれてきたわらび餅は、江戸時代には原料がわらび餅からくず粉に代わり、今ではほとんどがさつまいもやタピオカのデンプンで代用される。わらびの根から作るわらび餅。10kgの根っこから僅か70グラムしか出来ず、仕上げるのに半月もかかる。今や極少量しか出回らない鹿児島など国産のわらび粉から仕込んだ極上のわらび餅。
名前の由来、原点の味を食してミュゼというパズルのピースがまたひとつ揃った。今までなかった、三重県立美術館内レストランの名物スイーツが春の息吹きと共に登場する。