あるオーガニック系のマーケット。参加者がその姿を見つけると、目線に合わせて上体を沈める。つやっつやの肌と満面の笑み、そして山の声を代弁して喋る。
坂本幸さん、美杉在住の働き者のおばあちゃんこそが、最も原始的な保存食のスペシャリストであり、私の心の師である。
力漲る元気な野菜や野山の実りと対話し、極上の素朴を生み出す。ステーキ大根と言われる凍み大根、菊の花茶、干しスギタケ、トマト味噌など、私の料理に欠かすことの出来ない幸さん商品は体が喜んでいるような余韻の広がりである。
最後に、フランス料理界の巨星サンドランスのスペシャリテであり、多くの料理人が真似るフォワグラと大根の料理。特別ではない私の腕と、小さな巨人が作るステーキ大根とのマリアージュより美味しいそれに出会った事がない。