七つの頃、近所のお兄ちゃんの家でそれを初めて知った。大きな二つ折りの厚紙を広げると、目につく大きなルーレット。自分の好きな色の車を選び、そこに小さな青いピンを刺す。これがこのゲームの僕。
お金、保険、株に赤字手形など、日本の義務教育ではあまり教えてもらえない社会のリアルなどが散りばめられている。ルーレットという時間を自らの手で回し、止まったマスの出来事を受け入れながら自分の物語が進んでいく。そんな今思っても深い内容のボードゲームに子供の頃の僕は単純に真剣になった。
パイロットになって子どもに恵まれ一番でゴールする日もあれば、人生最大の賭けで失敗しすべてを失って泣きべそをかいた日も。笑いと涙が隣り合わせの人生ゲーム。そして今、僕はリアルな人生ゲームを野犬というキャラクターでプレイする。
今までに勝った記憶が一度もないと思える程、かなりのハード設定のようだ。中学の時に夢見たコックとして現在の店を持ち、毎日の仕入れなどの道草探しがSNSなどからお客様に繋がる。少年時代に神宮の山や勾玉池から身体で学んだ釣りや生き物との命の駆け引きが、野犬というプレイヤーの個性となり、今では釣った獲物や摘んだ野草が翌日には特別な食事のテーブルを飾る。
先が見えないこの時代。「次はどっちだっ!」指に渾身の力を込め、今日も魂のルーレットを回す。