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はじめに

執筆者 | 6月 21, 2023 | コラム | コメント0件

11年前に三重県立美術館内にある、レストラン「ミュゼ・ボン・ヴィヴァン」のシェフに就任した時、師である伊勢ボンヴィヴァンオーナーの河瀬毅シェフに命名していただいたのが「野犬シェフ」です。なんでも「疲れを知らず野山を駆け巡り、面白い食材や人との出会いをガブリとくわえてきそう」と、いろいろな意味を込めて名付けていただきました。

最初の頃は、「ほかにないもの」「フランスを感じるもの」と、大したことないくせに「どうだっ」という思いで包丁を握っていました。

いつからか、少々自分の料理スタイルに迷いはじめてまもなく、食通のお客様に「側はおいしいけど、主の食材に力がない…」と指摘され、さらに同じ時期、食事に行った近所の先輩シェフのお店で食べたシンプルな料理の中のみなぎるパワーに、脳が揺れました。

河瀬師匠と、神戸フレンチ界の父である名店ジャン・ムーランの美木剛シェフが、同じことを言っていたと頭をよぎりました。

料理が素材の味を超えることはできない。「何がおいしいのか」「何が心に響くのか」「ファクス1枚で注文…」「今の流行を追いかけ絵を描くように皿に点々と、熱のない料理をやりたいのか」「そもそも自分の料理とは…」。何か少しだけ光が見えた瞬間でした。

トリコロールの鎧(よろい)をポロシャツに着替え、歩き始めた道草探し。今思うと調理師から料理人になった時期です。

そんな中で出逢った宝物、この土地の匂いのする職人さんや自然の恵み、旬をお話したいと思います。

「山粧う111日ミュゼ12周年の日」。私なりの新たなスタート。