雪汁を出雲川が前浜に運ぶ頃、漁師達には慌ただしい季節が訪れる。脳内にあの歌がリピートされ、冬の終りに射すお日様に笑顔が溢れる。
3月3日の雛祭りに合わせ、全国で蛤が最盛期をむかえる。
国産物が激減している中、津の香良洲から女性の挙捏の立派な大蛤がミュゼに届く。
深い山からの養分が肥やす津の前浜。しょっぱ過ぎない海水が育む香良洲の大蛤。
酒で蒸した身に再度驚かされる。美味しすぎるエキスを抱き込んだ身は大きさを保ち縮まない。貝殻のかみ合わせが対の物以外は噛み合わない事から、夫婦和合の象徴とされ古くから慶事の食材とされた蛤。
そして香良洲の漁師の丁寧な仕事ぶりが見てとれる殻の美しさ。
私にはこの日本一の蛤が「あかりをつけたぼんぼり」に見える。
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